元保育士の山岸もまた、「もどかしさ」を抱える一人でした。
保育の現場で目にするベビーウエア。
肌を刺激するゴワゴワの生地。みみず腫れを作る手首のゴム。
そしてデザイン重視でつけられたたくさんの金属スナップは、
オムツ換えのたびにお母さんたちのストレスになり、
赤ちゃんの肌をいじめている事実を知りました。

「なぜ、こんなベビーウエアしか売ってないのか?」

山岸が自分なりに考える「本当のベビーウエアのあるべき姿」を語るたびに
「そんな採算に合わない商品を作る会社なんて、あるはずないでだろう」と、
保育士の同僚たちは皆一様に、
あきらめにも似た冷ややかな反応で答えるだけでした。
そして、それは山岸本人にも、十分にわかっていることでした。

大量生産と利益最優先の陰で、見過ごされ、我慢を強いられ、
言葉に出せない苦しみに苛まれている赤ちゃんやお母さんたちの姿を前に、
山岸もまた、どうすることもできないもどかしさを、日々募らせていきました。